東京高等裁判所 平成10年(ラ)2459号 決定 1999年4月19日
抗告人
株式会社彩プロジェクトこと
伊藤一三
右代理人弁護士
花村聡
同
小比賀正義
相手方
大和ギャランティ株式会社
(旧商号 新日本保証株式会社)
代表者代表取締役
鈴木剛夫
主文
一 本件抗告を棄却する。
二 抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一 本件抗告の趣旨及び理由は、別紙執行抗告状及び抗告理由書(各写し)記載のとおりである。
二 抗告人の抗告理由は、要するに、原決定別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)の根抵当権者である相手方は、本件建物の賃借人であり、かつ、転貸人である抗告人が取得する転貸料債権に物上代位権を及ぼすことができないのにもかかわらず、原決定は、相手方の根抵当権に基づき、抗告人が第三債務者に対して有する転貸料債権の差押えを認めた違法なものであるから、直ちに取り消されるべきであるというにある。
よって検討するに、抵当権者(以下根抵当権者についても同じ)は、抵当権設定者が目的物を第三者に賃貸することによって賃料債権を取得した場合には、民法三〇四条一項を準用する同法三七二条により、上記賃料債権について抵当権を行使することができる(最高裁判所平成元年一〇月二七日第二小法廷判決・民集四三巻九号一〇七〇頁参照)ところ、民法三〇四条一項の「債務者」には、抵当不動産の所有者及び第三取得者のほか、抵当不動産を抵当権設定の後に賃借した者も含まれ、したがって、抵当権設定後の賃借人が目的不動産を転貸した場合には、その転貸料債権に対しても抵当権に基づく物上代位権が及ぶと解するのが相当である。
これを本件についてみると、抗告人は、本件建物に根抵当権が設定された後、本件建物の所有者である高山光夫から賃借したものであるから、これを転貸したことにより取得する転貸料債権には、根抵当権に基づく物上代位権が及ぶというべきである。その他記録を精査しても、原決定にはこれを取り消すべき事由を見いだすことはできない。
三 よって、原決定は相当であり、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官・塩崎勤、裁判官・小林正、裁判官・萩原秀紀)